カスタムバイクの買取は、ノーマルパーツに戻すと高く売れる

愛車を自分色に染め上げる「カスタム」。それはライダーにとって究極の自己表現であり、バイクライフの醍醐味です。しかし、いざ「売却」というステージに立ったとき、そのこだわりが必ずしもプラスに働くとは限りません。

2024年~2025年現在、中古バイク市場は「空前の高騰」から「落ち着いた適正価格」へと移行しています。その中で、カスタムバイクの評価基準は以前よりもシビアになっているのが現実です。

今回は、数多のカスタムマシンを見てきた経験から、愛車を1円でも高く、そして納得のいく形で送り出すための「カスタムバイク売却・究極の戦略」を徹底解説します。

現代のバイク買取事情：なぜ「ノーマル」が最強なのか？

結論から言えば、最も高く、かつ確実に売れるのは「ノーマル（純正）状態」のバイクです。

なぜ、何十万円もかけて高性能パーツを組み込んだバイクより、地味な純正状態の方が評価されるのか。そこには、買取業者と中古車市場の明確なメカニズムがあります。

買取業者がカスタムを敬遠するメカニズム

• 客層の広さ： 中古車を買う人の8割以上は「普通のノーマル車」を探しています。個性的なカスタムは、好みが一致する極少数の人にしか刺さらず、店側にとっては「売れ残るリスク」になります。
• 品質の不確実性： プロの整備士が組んだのか、素人が独学で組んだのか、外観だけでは判断できません。特に電装系や吸排気系のカスタムは、将来的なトラブルの火種として警戒されます。
• 保証の問題： 大手販売店では中古車に保証をつけますが、社外パーツが多いと故障時の責任の所在が曖昧になるため、保証をつけにくく、結果として買取価格を下げざるを得ないのです。

2024年~2025年の最新トレンド：査定を左右する「規制」の壁

現在のバイクを取り巻く環境において、カスタムの評価を決定づけるのは「法規制への適合」です。

JMCA認証マフラーの有無が命運を分ける

2024年現在、排ガス規制（ユーロ5+相当）や騒音規制は非常に厳格です。
かつては「社外マフラーなら何でもプラス」という時代もありましたが、今は違います。「JMCAプレート」がない、あるいは「eマーク」がない違法マフラーが装着されている場合、大手買取業者ではマイナス査定、最悪の場合は買取不可となるケースが増えています。

逆に、ヨシムラやアクラポヴィッチといった有名ブランドの「政府認証マフラー」であり、なおかつ純正パーツが完備されていれば、それは確実なプラス査定へと繋がります。

損をしないための「究極の売却戦略」

カスタムしたまま売るべきか、ノーマルに戻すべきか。その判断基準は「パーツのブランド力」と「純正パーツの有無」にあります。

戦略1：ノーマルに戻して「パーツ単体」で売却する

最も手残りの金額が多くなる王道のパターンです。
オーリンズのサスペンション、ブレンボのキャリパー、ゲイルスピードのホイールといった「超一流ブランド」のパーツは、バイクに付けたまま査定に出しても数万円のプラスにしかなりませんが、ヤフオクやフリマアプリで単体売却すれば、定価の5割~7割という高値で取引されます。

戦略2：純正パーツを「添えて」査定に出す

「戻すのが面倒」「工賃がかかる」という場合は、カスタムしたままでも構いません。ただし、外した純正パーツを必ずすべて用意してください。
「いつでもノーマルに戻せる」という安心感は、査定士にとって最大の加点ポイントになります。

パーツの種類	査定での評価	おすすめの売却方法
有名ブランドマフラー	認証品ならプラス、不明品はマイナス	純正があれば戻して単体売却
高級サスペンション	小幅なプラス	絶対に戻して単体売却がお得
ナビ・オーディオ・ドラレコ	ほぼ評価されない	次のバイクへ移設するのがベスト
外装ペイント・カウル	大幅なマイナス要因	純正カウルに戻す

プロが教える「賢い査定の受け方」

査定士が来たとき、いきなりカスタムパーツの自慢をするのは得策ではありません。

まずは「ノーマルパーツが全部揃っていること」を伝え、その上で「この状態でいくら、ノーマルに戻したらいくら」という2パターンの見積もりを打診してみてください。

「パーツを外す手間（工賃）」と「単体で売却できる見込み額」を天秤にかけ、どちらが有利かをその場で判断するのが賢いライダーのやり方です。

先輩ライダーたちのリアルな声：カスタムバイク売却の格言

まとめ

カスタムバイクを高く売るための秘訣は、あなたの「こだわり」を一旦脇に置き、「次に買う人が何を求めているか」という市場の視点を持つことです。

• バイク買取において、社外パーツの価値は「単体売却」の相場より必ず低くなる。
• ショップが最も欲しがるのは、安心・安全な「フルノーマル車両」である。
• 高価な有名ブランドパーツは、手間をかけてでも戻して別売りするのが最大利益への近道。
• 純正パーツを紛失・破棄するのは、査定額を数万円捨てるのと同じ。
• 作業に自信がない場合は、無理に戻してキズをつけず、パーツを添えて交渉する。

あなたの愛車が、次のオーナーの手元でも最高の鼓動を刻めるように。そして、あなたが納得のいく軍資金を手にして、次のバイクライフへと踏み出せるように。
まずは一度、純正パーツを引っ張り出して、現状の「本当の価値」を査定で確認することから始めてみてください。